
イギリスのクリスマスってどんな感じ?
クリスマスは、イギリスでも一大イベントのひとつ。格式の高いイギリスのクリスマスはヨーロッパでも随一。前回はアメリカのクリスマスをお話したので、今回はイギリスではどのようにクリスマスを迎えるのか覗いてみましょう。
教会行事に参加する
イギリスもアメリカと同様、キリストの生誕を祝う極めて宗教的な日です。敬虔なキリスト教徒はクリスマスの1週間くらい前から正装で教会の礼拝に参加します。
クリスマスキャロルを歌うイベントを開催する教会もあり、多くの場合、信者以外の人たちも自由に参加できます。
クリスマスが禁止されていた時代もあった?!
1651年、英国王チャールズ1世が内戦で敗れ、政府は清教徒が実権を握り、クリスマスをカトリックの祝い事だと嫌い、1647年にクリスマス禁止令が発布されました。1660年には君主制に戻り、新国王であるチャールズ2世がこの禁止令に終止符をうち、クリスマスを祝う習慣も復活。クリスマスを禁止された国民の多くはこの禁止令に反発し、暴動を起こし、ひっそりと祝宴を行っていたそう。
クリスマスが盛んになったのはヴィクトリア朝(1837~1901年)時代。この頃のイギリスではヴィクトリア女王とドイツ出身の夫アルバートが多くのクリスマスの伝統をドイツから取り入れました。1848年には毎年クリスマスツリーを飾る伝統を世間に広め、‟The Illustrated London News”紙に王室のクリスマスツリーのイラストが掲載されると、国民達がイラストをコピーするほど人気となったそうで。
王室からクリスマスメッセージ
1957年のクリスマスから始まった、エリザベス女王の国民に向けたテレビスピーチ。以来、新たな王室の伝統として根付き、王室がより身近な存在になりました。1932年に、ジョージ5世がラジオでスピーチを流したことが始まりだったが、テレビ放映へと移り変わりました。さらに“開かれた英国王室”へと変化していったのです。午後3時に始まるスピーチを観ながらプレゼントを交換や団欒をしたりするのが慣わしです。
イギリスのクリスマス料理ってどんなの?
イギリスではクリスマスが近くなるとクローブ、シナモン、ナツメグなどのクリスマスにちなんだスパイスの香りが漂い、料理やスウィーツにも多く使われます。イギリスでは一般的に25日がクリスマスディナーを楽しむ日です。イギリスもアメリカと同様、クリスマスは家族と過ごす大切な日。遠方にいる家族が集まり、食卓を囲み団欒をします。
クリスマスプディング
クリスマスプディング(Christmas Pudding)の歴史は古く、中世のクリスマスに遡り、16世紀までにクリスマスの定番スウィーツのひとつに。生パン粉、小麦粉、バター、卵、砂糖、ブランデーなどにつけて柔らかくしたカレンツ、レーズン、ナッツ、プルーン、柑橘類のドライフルーツ、ナッツ類、ナツメグ、シナモン、クローブ、ラム酒などの材料を混ぜ合わせて一晩寝かせた生地をオーブンで焼くと出来上がり。13種類の材料が使われていなければならないという迷信があるそうです。家庭ごとに異なる味とレシピがあるんだとか。1ヶ月くらい前に作って当日まで寝かせて置きます。
ミンスパイ
ミンスパイ(Mince Pie)は、ドライフルーツとスパイスで作ったミンスミートを詰めたスウィーツです。東方の賢人がキリストの誕生を祝うために捧げた没薬が、ミンスパイの起源と言われ、以前は果実や肉に香辛料と甘みを加えたものをパイ生地包んでゆりかごをかたどりキリストを表す小さな像を入れて焼き上げていたそう。
七面鳥やガチョウのロースト
イギリスでもクリスマスに七面鳥やガチョウ(Roasted Goose/Turkey)をローストして食べる習慣があります。クランベリーソースや赤スグリのゼリーをかけて食べるのが一般的です。クリスマスの肉料理はイギリスもアメリカも同じです。ただ、ガチョウの方が味が濃く、しっとりしているそうです。
マルドワイン
マルドワイン(Mulled wine)は、クローブ、ショウガ、ナツメグ、シナモン、砂糖や蜂蜜で味付けしたホットワイン。冬になるとヨーロッパ各地で飲まれます。アルコールが飲めない人や子供たちにはマルドサイダーやマルドアップルジュースを。
クリスマスティー
クリスマスティー(Christmas Tea)は紅茶が労働者階級にまで普及し国民的飲料となった19世紀中頃のイギリスが発祥。クリスマスを祝うことは清教徒革命の影響で廃止されていたのですが、その頃その頃、クリスマスの習慣が復活します。豪華なディナーも復活し、当時高価だったスパイスや柑橘系の果物を紅茶にも入れたのが始まりです。
紅茶に入れるスパイスはキリスト誕生の際に訪れた東方の三賢人がキリストに贈った乳香、没薬、黄金の3つの品を象徴するシナモン、クローブ、ナツメグが使われます。
クリスマスはお店や交通機関が全て閉店に!
イギリスでは、12月24日と25日の2日間、一部のショップやレストラン以外全て閉店し、公共交通手段も止まってしまいます。クリスマスにイギリスを訪れて遠出をしたり、買い物を楽しもうとする場合、どこも開いてなかった!行けなかった!ということもあるので注意が必要です。イギリスでは通常クリスマス前の12月21日から1月2日にかけて休暇を取る習慣があります。
年最大のセール、ボクシングデー!
クリスマスの次の日の12月26日はボクシングデー(Boxing Day)と呼ばれ、あらゆるデパートで年最大の大セールが行われます。デパートだけでなく高級ブランドやブティックも大幅値下げをするので、開店と同時に店内に駆け込み争奪戦を繰り広げる人たちの姿がテレビで放送されるのも風物詩です。
現在はバーゲンセールの日という認識がつよい祝日ですが、本来はイギリスと英連邦でよく見られる、聖ステファノの日に由来するキリスト教の休日です。ボクシングデーのボクシング(Boxing)はBox。「箱」です。教会が貧しい人たちのために寄付を募ったクリスマスプレゼントの箱を開ける日だったことから、Boxing Dayと呼ばれるようになったという説や、クリスマスも働かなくては行けなかった郵便配達員や召使いたちが翌日26日に休みをとり箱にプレゼントを入れて贈りあったという説があります。
イギリス人はクリスマスギフトに平均いくら使うのか?
クリスマスショッピングは本当に大変!イギリスではクリスマスに家族全員分のプレゼントを用意します。そして、多くは一人一つ以上という相場。
2019年の一軒当たりのクリスマスギフトの平均出費額予想は、イングランド銀行のレポートによると、£800(約114,000円)の出費が予想されているとのこと。
クリスマスといえばクリスマスキャロル!
イギリスの文豪チャールズ・ディケンズが1843年12月19日に小説「クリスマス・ブックス」を出版。発売から5日間で完売するほど瞬く間に人気となりました。その第1作「クリスマスキャロル」は、守銭奴のスクルージがクリスマスイヴに、精霊と過去・現在・未来の旅をし、改心をするストーリー。感動を呼び幾度となく映画化され、クリスマスの定番となっています。典型的なクリスマスの精神について書かれた本書は、その時代のクリスマスの祝い方に影響を与え、以降のクリスマス文化が存在するのはディケンズのおかげだと言えるでしょう。
イギリスではサンタクロースって呼ばないの?
イギリスでは、サンタクロースのことを”ファーザー・クリスマス(Father Christmas)”と呼びます。イギリスではアメリカ風なサンタクロースという名称を嫌う傾向にあり、俗っぽい低層階級が呼ぶ名前だと怒られる場合もあります。イギリスの市場調査会社YOUGOVの調査(2017年)によるとサンタクロースのことを51%の人々が‟ファーザー・クリスマス”と呼んでいるそうです。ファーザークリスマスの伝統的な衣装は緑。これは春の知らせを告げる色なんだそう。
子供たちはクリスマスイヴに大きな靴下(Christmas Stocking)を吊るし、ファーザー・クリスマスとトナカイがやって来てくれるのをワクワクして待ちながらベッドに入ます。靴下の横にはファーザー・クリスマスの好きなミンスパイやシェリー酒、トナカイのためにはニンジンを用意することも。
トラファルガー広場のクリスマスツリーにもイギリスならではの由来が…
ロンドンで一番大きなクリスマスツリーは、トラファルガー広場に設置されるもので、第二次大戦時にイギリス軍がノルウェーを援護したことへのお礼として、毎年、ノルウェーから届けられます。クリスマスの飾りは1月6日の公現祭の前夜まで飾られ、これを過ぎて飾るのは不運を呼ぶとされ、律儀に守られています。捨てられた生木のツリーは行政区が回収し、堆肥などにリサイクルされるそう。
〈香りの魔除け〉ポマンダー
イギリスのクリスマーケット等でよくオレンジにとクローブ、シナモンなどのスパイスでデコレーションしたポマンダー(Pomander)と呼ばれる魔よけグッズを見かけます。10月頃から作り始め、リースやツリーのオーナメントとして用いられます。
本来、中世ヨーロッパの貴族たちが持ち歩く、金や銅でできた丸い飾りだったポマンダー。ハーブやスパイスを中に詰め魔除け、または薬として持ち歩いていたといわれます。
クリスティングルって何?
クリスティングル(Christingle)とは、1968年に英国国教会が取り入れた、キリストやクリスマスを子供たちに分かりやすく説明するためのオレンジを使用した道具のようなもの。オレンジは地球、赤いリボンはキリストの血、キャンドルはキリストが地球を明るく照らしている様子、4本のつまようじに刺されているお菓子やドライフルーツは大地からの恵み、4方向は四季節を表しています。
クリスマス近くになると学校からクリスティングルを作ってくるようにという連絡があり、キリスト誕生劇(Nativity Play)の発表のあと、クリスティングルサービスをします。
ロンドンでお勧めのクリスマススポット
ロンドン市内で美しいクリスマスツリーやクリスマスイルミネーションを堪能できるスポットを紹介いたします。
サマーセットハウス
大きなクリスマスツリーとライトアップで人気のサマーセットハウス(Somerset House)。期間限定でアイススケートリンク場が開設されます。
カーナビーストリート
オシャレなショップやカフェ、バーが立ち並ぶカーナビーストリート(Carnaby Street)には毎年ポップなライトアップが施されます。
リージェントストリート
リバティや高級ブランドが並ぶリージェントストリート(Regent Street)に施されるライトアップが施されます。
ウィンターワンダーランド
11月下旬から1月の初旬までハイドパークで開催される期間限定の遊園地ウィンターワンダーランド(Winter Wonderland)。
キューガーデンズ
ロンドン南部にあるキューガーデンズ(Kew Gardens)。国内最大級の植物園内にクリスマス時期にライトアップが施されます。